ごく一般的な1枚ものの板ガラスだけでなく、ペア(複層)ガラスも含むさまざまな窓ガラスにフィルムを貼る家庭が増えています。
また、近年では小学校など公共施設における窓ガラスにもフィルムが貼られているのが当たり前の光景となっており、より身近な存在となりつつあります。
ではなぜ、窓ガラスにフィルムを貼るのか、そこにはどういった意味があるのか、疑問に感じている人も少なくないでしょう。
そこで今回は、こうした疑問を解決すべく、窓ガラスのフィルムについて解説していきます。
もくじ
窓ガラスに貼るフィルムって何?
車の窓ガラスに「スモークフィルム」と呼ばれる黒っぽいシートが貼られているのを見たことはないでしょうか。近年、家庭の窓ガラスに貼られることが多いフィルムも、それらとほぼ同一のものと考えて良いでしょう。
フィルムにはどういうメリットがあるの?
窓ガラスにフィルムを貼るメリットは、さまざまです。
プライバシー保護
室外から室内の様子が見えるのを防ぐ効果があります。「カーテンをすればいい」と思う人も多いのですが、カーテンをしても防げないケースも少なくありません。特に、レースのカーテンでは思いのほか室内の様子が透けて見えてしまっているという現実があるのです。
防犯・防災
窓ガラスが割れた時、細かく飛散するのを防ぐ効果があります。小さな子供がいる家庭では、こうした効果への期待から窓ガラスにフィルムを貼っているケースが少なくありません。
また、室外から窓を割って侵入する空き巣などに対しては、防犯という効果も得られます。貼られたフィルムが、窓ガラスを割れにくくするため、一定の防犯効果が得られると人気です。
室内の温度上昇・日焼けを防ぐ
窓ガラスから入ってくる太陽光および熱を防ぐ効果が得られます。特に真夏など高温となる時期には、窓ガラスから入ってくる熱を防ぐことでエアコンの効果を最大限に生かし、節電にもつなげることが可能です。
また、室内の家具類や床などの日焼けも効率的に防いでくれます。
防音
窓ガラス用のフィルムの中には、防音効果をうたっているものもあります。こうした商品の場合は、楽器やペットの鳴き声など周囲に気を使う「音」を、一定の範囲で防ぐ効果が期待できます。
このように、窓ガラス用のフィルムにはさまざまな効果が期待でき、単に「オシャレ」「外見のため」といった目的ではないものだということがわかります。特に窓ガラスが割れた際の飛散防止効果は、公共施設の窓ガラスにフィルムが貼られる最大の目的となっており、ますます広がりを見せています。
ペアガラスにもフィルムは必要?
さまざまな効果が期待される窓ガラスのフィルムですが、室内の温度上昇や日焼け防止の効果については「あれ?」と疑問に思う人もいるでしょう。
もともと断熱・遮熱の効果を持っているものが多いペアガラスなら、本来はフィルムは必要ないのでは?…という点です。
そのとおりです。ペアガラスなら温度上昇や日焼けに対する対策がもともと施されているので、フィルムを貼る必要性は「まったく無い」とは言いませんが、決して高くはないのです。
しかも。ペアガラスに一般的なフィルムを貼ることは、実はとても危険なことなのです。
ペアガラスにフィルムが危険なワケ
ペアガラスは、2枚の板ガラスを組み合わせて作ってあります。そのガラスとガラスの間には空気層が設けられており、乾燥した空気が密封されています。
気体は温められると膨張する性質をもっており、それはペアガラスの空気層に入っている空気に関しても同様です。つまり、室外からの直射日光によってペアガラスが高温にさらされると、空気層に入っている空気が温められて膨張する可能性があるのです。
ですが、通常の状態ではそれに耐えうるだけの性能を持っており、予想を上回る高温となることはありません。空気層の空気が膨張する可能性があるのは、フィルムを貼ることで通常以上の熱を吸収し、異常なまでの高温となってしまった場合です。
こうして空気層の空気が膨張してしまった場合、ペアガラスは熱に耐え切れず、熱割れを起こしてしまうのです。
そのため、ペアガラスにフィルムを貼るのは危険とされているのです。
ペアガラスにも貼れるフィルムがある
ペアガラスにフィルムを貼ることは危険だというお話をしましたが、実はペアガラスに貼ることのできるフィルムも存在しているのです。
・熱を吸収しないもの(遮熱タイプ)※断熱タイプは×
・透明なもの
この2種類のフィルムなら、ペアガラスでも貼ることが可能です。
防犯・防災やプライバシー保護目的などで、どうしてもフィルムを貼らなくてはならない場合には、これらの「ペアガラス可」フィルムを使用するようにしてください。
ただし、無色透明なフィルムでも熱を吸収してしまうものもありますので、商品説明はよく見て確認するようにしてください。
フィルムの貼り方のコツとは?
窓ガラス用のフィルムには、一度貼ったら貼りなおしができない強粘着タイプと、何度でも貼り直しが可能なタイプがあります。
貼りなおし不可タイプ
一般的な窓ガラス用フィルムに多いタイプです。貼り付け方・注意点は車のスモークフィルムを貼る際と同様です。
まずはフィルム貼り付け用水を作ります。貼り付け用水というと難しそうに聞こえますが、意外に簡単です。「100ccの水に台所用の中性洗剤を1滴程度」の割合で入れるだけです。次に、窓ガラスをきれいにしたあと、霧吹きなどで窓ガラスとフィルムの両方に貼り付け用水をたっぷりと吹きかけ、乾く前にフィルムを乗せて貼り付けます。十分に貼り付け用水が吹き付けてあれば、滑らせながらある程度位置の修正は可能です。その後、中の水分を押し出しながらヘラを使って窓ガラスに密着させていきます。
注意点は、窓ガラスとフィルムの間に空気が残ってしまわないように十分に貼り付け用水を吹きかけておくこと、そしてしっかりとヘラで水分と空気を一緒に押し出していくことです。
貼りなおし可タイプ
粘着タイプではなく、失敗しても何度でも貼りなおしができるので、特にコツらしいものはありません。
ただ、粘着タイプ同様に、窓ガラスとフィルムの間に空気が残ってしまうと見栄えが悪いだけでなく、残った空気部分が高温となってしまう可能性や、はがれてくる可能性もゼロではないので、しっかりと空気を抜くようにしましょう。
さいごに
最近流行ともなりつつある窓ガラス用フィルム。単に見た目だけの飾りだと思っている人も多いのですが、実は家を守るため、家族の安全のためという目的が込められているものだったのです。
そしてそれは、一般的な板ガラスのみならず、室内の温度対策は必要ないペアガラスでも、防犯・防災やプライバシー対策として大いに利用されているのです。
さまざまな意味で物騒な世の中となりつつある今、窓ガラスにフィルムを貼るというシンプルかつ簡単な方法で少しでも安全が確保できるのなら、利用しない手はなさそうです。
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参照:ペア(複層)ガラスの交換費用はいくら?価格や交換方法は?
参照:ペア(複層)ガラスの効果とは?どういうメリットがあるの?